退職後の健康保険はいくらになるか — 扶養・任意継続・国保を8自治体の実額で比べる

保険料は「前年の所得」で決まる

国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算されます。令和8年度の場合、令和7年中の総所得金額等から基礎控除額43万円を差し引いた額が算定の基礎になります。

つまり、退職した最初の1年は、在職中に得ていた所得に対して保険料がかかります。退職して収入が無くなっても、保険料は前年の水準のまま届きます。この基礎控除後の所得は「旧ただし書き所得」と呼ばれます。

選択肢は3つある

退職後の健康保険には3つの選択肢があります。二択ではありません。家族の扶養に入れれば保険料の負担はありませんが、それ以外の2つは金額を比べて選びます。

一つ目は、家族の健康保険の被扶養者になる方法です。保険料の負担はありません。年間収入が130万円未満(60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)で、同一世帯なら被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満であることが条件です。配偶者・子・孫・兄弟姉妹・直系尊属は、同居していなくてもこの扶養に入れます。

ただし、独立して事業所得を得るつもりなら、この方法は使えないことが多くなります。

二つ目は、任意継続です。退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることが条件です。

三つ目は、国民健康保険です。上の2つのどちらにも当てはまらない場合は、ここに入ります。

手続きの期限を先に

手続きの期限は、保険料の金額より先に確認しておきます。

国民健康保険への加入は、退職日の翌日から14日以内に届け出る必要があります。任意継続を選ぶ場合は、この届出は不要です。

任意継続を選ぶ場合は、退職日の翌日から20日以内に申請しなければなりません。20日目が土曜・日曜・祝日にあたるときは翌営業日まで、郵送で申請するときは20日以内に必着させる必要があります。

この20日を過ぎると、任意継続という選択肢自体が無くなります。金額を比べるのは、期限を確認したあとにします。

国民健康保険はいくらになるか

国民健康保険料は住む市区町村ごとに料率が違うため、同じ収入でも金額が変わります。次の表は、単身・40〜64歳・子なしの人が、前年の給与収入がそれぞれ300万円・500万円・700万円・1,000万円だった場合の令和8年度の年額を、8つの自治体で並べたものです。

自治体 300万円 500万円 700万円 1,000万円
大阪市 35.7万円 59.5万円 84.8万円 110.8万円
川崎市 30.1万円 51.9万円 75.1万円 110.2万円
横浜市 29.7万円 51.4万円 74.6万円 108.1万円
名古屋市 30.7万円 52.3万円 75.3万円 107.4万円
札幌市 30.4万円 51.7万円 74.3万円 107.6万円
広島市 31.9万円 52.9万円 75.2万円 108.4万円
新宿区 29.2万円 49.2万円 70.5万円 104.3万円
福岡市 26.3万円 44.2万円 63.2万円 91.6万円

この表は、単身・40〜64歳・子なしの人が前年に給与収入があった場合の、令和8年度の年額です。世帯人数や年齢が違えば金額は変わります。確定額ではないので、自分が払う額は住んでいる市区町村で確認してください。

保険料は、医療分・後期高齢者支援金分・介護納付金分(40〜64歳のみ)・子ども・子育て支援金分という4つの成分の合計です。子ども・子育て支援金分は、令和8年度に新設された4つ目の区分です。

成分ごとに上限額(賦課限度額)が決まっています。新宿区の場合、医療分67万円・支援金分26万円・介護分17万円・子ども・子育て分3万円で、合計113万円です。この上限額も自治体の条例で決まるため、全国一律ではありません。大阪市は医療分の上限が66万円で、合計は112万円になります。

1,000万円の列で自治体間の差が縮んでいるのは、収入が上がるほど成分ごとの上限額に当たる自治体が増えるためです。300万円の列では最も高い自治体と低い自治体の差が1.36倍ですが、1,000万円の列では1.21倍まで縮みます。

どの成分が先に上限に当たるかは自治体によって違います。1,000万円の列では、介護納付金分は8つの自治体すべてで上限に当たっており、同じ列で医療分が上限に届かないのは新宿区と福岡市だけです。新宿区と福岡市は上限に当たっている成分の数が同じですが、この列の金額は12.7万円違います。差を作っているのは上限に当たった成分の数ではなく、医療分の所得割率です(新宿区7.51%、福岡市5.58%)。

任意継続と比べる

任意継続は、退職前に加入していた健康保険にそのまま入り続ける方法です。在職中は保険料を事業主と折半していましたが、退職後は全額を自分で負担します。協会けんぽは、任意継続の保険料について「退職時の健康保険料の2倍となります」と説明しています。給与明細の健康保険料欄の金額を2倍すると、おおよその任意継続の保険料が分かります。ただし、退職時の標準報酬月額が上限の32万円に当たっていた人は、2倍よりも安くなります。

保険料の基礎になる標準報酬月額には上限があります。協会けんぽの場合、令和8年度は32万円です。これは令和7年9月30日時点の協会けんぽの全被保険者の平均標準報酬月額318,100円をもとに決まった額で、退職時の標準報酬月額がこれを超えていた人も、32万円として計算されます。この上限は保険者ごとの平均で決まるため、健康保険組合に加入していた人は別の額になります。

任意継続に加入できるのは2年間です。

任意継続の標準報酬月額は上限の32万円で頭打ちし、加入している間は変わりません。一方、国民健康保険料は前年の所得に比例するため、前年の所得が高い人ほど任意継続が有利になりやすく、低い人ほど国民健康保険が有利になりやすくなります。1年目の時点でどちらが安いかは、人によって変わります。退職して所得が下がれば国民健康保険料は2年目に下がるため、1年目の金額を比べて選んでも、2年目にもう一度金額の高低が入れ替わることがあります。この場合は、任意継続をやめたい旨を申し出れば国民健康保険に移れます。1年目の選択が2年間を縛るわけではありません。

軽減される人・されない人

国民健康保険料のうち均等割・平等割には、世帯の所得に応じて7割・5割・2割を軽減する仕組みがあります。判定は世帯全体の所得で行います。単身世帯の場合、7割軽減は43万円以下、5割軽減は43万円+31万円以下、2割軽減は43万円+57万円以下です。

この記事の表には、この軽減を反映していません。表の条件(前年に給与収入があった単身世帯)では、いちばん保険料が低い列(給与収入300万円、総所得202万円)でもこの基準をすべて超えるためです。表のどの欄を見ても、軽減は当たりません。

保険料の上限額(賦課限度額)は、保険料が一定額を超えないようにする仕組みでした。ここでの軽減はその逆で、所得が低い世帯の負担を減らす、別の仕組みです。同じ「当たる」でも、上限に当たることと軽減に当たることでは向きが逆になります。

軽減が当たり始めるのは、退職して所得が下がった翌年からです。任意継続の標準報酬月額が2年間据え置きで国民健康保険が2年目に下がりうるというのと同じ構造で、ここでも効果が出るのは1年遅れます。

もう一つ、非自発的失業者の軽減という制度もあります。離職日の時点で65歳未満で、ハローワークから特定受給資格者または特定理由離職者と認定された人が対象です。前年の給与所得を実際の100分の30とみなして保険料を計算し直します。対象になる期間は、離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。

ただし、独立のために自分の意思で退職する場合は、この軽減の対象になりません。倒産や解雇、雇い止めなどで職を失った人向けの制度で、検索するとよく出てきますが、自己都合退職には当てはまりません。

自分の額を調べる手順

表は、自分の市区町村がどのあたりに位置するかを見るためのものです。確定額ではないので、実際の手続き前には自分の自治体で調べます。

「〈市区町村名〉 国民健康保険料 令和8年度」のように検索すると、自治体の公式ページに辿り着けます。そこで見る数字は、所得割率・均等割額・平等割額の3つです(平等割額が無い自治体もあります)。医療分・支援金分・介護分・子ども子育て分という成分ごとに、この3つが分かれて示されています。

計算するときは、まず自分の旧ただし書き所得(前年の総所得金額等から43万円を引いた額)に所得割率を掛けます。そこに均等割額(加入者の人数ぶん)を足し、平等割額(1世帯ぶん)があればそれも足すと、成分ごとの保険料になります。平等割額が無い自治体では、足さずに進めます。これを医療分・支援金分・介護分・子ども子育て分の4つで計算し、合計したものが年間の保険料です。

自治体によっては、金額を入力するだけで試算できるページを用意しています。あれば、そちらを使うほうが早くなります。

何ヶ月もつかを見る

このサイトの計算機は、住む場所を聞かずに保険料を出します。市区町村ごとに料率が違う中で住所を入力させずに計算するため、どの市区町村で退職しても足りるだけの高い額を使っています。この記事の表に出てきた8つの自治体のどれよりも高い額です。

つまり、記事の表と計算機とでは、見ている額の性格が違います。表は実在する自治体の実額で、自分の市区町村がどのあたりかを見るためのものです。計算機は、辞められるかどうかを判断する場面で高く出すぎて後から困らないように、楽観側に振れない額を使っています。

出典

  1. 新宿区『令和8年度の国民健康保険料』令和8年度・新宿区 / 2026年9月17日 確認
  2. 大阪市『国民健康保険料の計算方法』令和8年度・大阪市 / 2026年9月17日 確認
  3. 川崎市『国民健康保険料の計算方法』令和8年度・川崎市 / 2026年9月17日 確認
  4. 横浜市『国民健康保険料率』令和8年度・横浜市 / 2026年9月17日 確認
  5. 名古屋市『国民健康保険料の決め方』令和8年度・名古屋市 / 2026年9月17日 確認
  6. 札幌市『保険料の賦課』令和8年度・札幌市 / 2026年9月17日 確認
  7. 広島市『国民健康保険料の計算方法』令和8年度・広島市 / 2026年9月17日 確認
  8. 福岡市『保険料の決め方』令和8年度・福岡市 / 2026年9月17日 確認
  9. 厚生労働省『令和8年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)』令和8年度 / 2026年9月17日 確認
  10. 厚生労働省『国民健康保険の加入・脱退について』2026年9月17日 確認
  11. 新宿区『非自発的失業者の国民健康保険料の軽減について』新宿区 / 2026年9月17日 確認
  12. 全国健康保険協会『任意継続』2026年9月17日 確認
  13. 全国健康保険協会『【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について』令和8年度 / 2026年9月17日 確認
  14. 日本年金機構『従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』2026年9月17日 確認
  15. 国税庁『No.1410 給与所得控除』令和7年分・令和8年分 / 2026年9月17日 確認