退職すると配偶者が第3号被保険者から外れる — 国民年金は1人分増え、健康保険は選び方で変わる

辞めると、配偶者の年金の区分も一緒に変わる

会社員として厚生年金保険に入っている人は、国民年金では第2号被保険者です。その配偶者のうち、主として第2号被保険者の収入により生計を維持している20歳以上60歳未満の人が第3号被保険者です(国民年金法7条1項2号・3号。日本国内に住所があることなどの条件も付いています)。

第3号被保険者のあいだ、配偶者は保険料を納めていません。国民年金法は、第3号被保険者としての期間について「政府は、保険料を徴収せず、被保険者は、保険料を納付することを要しない」と定めています(94条の6)。日本年金機構も「保険料は、第2号被保険者全体で負担しますので、個別に納める必要はありません」と説明しています。

会社を辞めて厚生年金保険の被保険者でなくなると、本人は第2号被保険者ではなくなります。すると配偶者も、第3号の条件である「第2号被保険者の配偶者」に当たらなくなります。日本年金機構は、第2号被保険者が退職した際、その被保険者に扶養されていた配偶者も「同時に国民年金第3号被保険者の資格を喪失する」としています。

第3号から外れた配偶者は、日本国内に住む20歳以上60歳未満であれば第1号被保険者になります(同法7条1項1号。老齢を理由とする年金を受けられる人などは除かれます)。第1号被保険者は保険料を自分で納めるので、配偶者の分の国民年金保険料が新たに1人分かかるようになります。

年金は、健康保険をどちらにしても変わらない

退職後の健康保険を国民健康保険にするか任意継続にするかで、配偶者の扱いが変わるのは健康保険の側だけです。

退職後の健康保険 配偶者の国民年金 配偶者の健康保険
国民健康保険 第1号被保険者。保険料が新たに1人分かかる 配偶者も国民健康保険の加入者になり、保険料が配偶者の分だけ増える
任意継続 第1号被保険者。保険料が新たに1人分かかる 生計維持などの条件を満たせば、本人の任意継続の被扶養者になれる

国民年金の列が2行とも同じなのは、第3号の条件が「厚生年金保険の被保険者」の配偶者であることだからです(国民年金法7条1項2号・3号)。任意継続は健康保険法の仕組みで(健康保険法3条1項)、第3号の条件には出てきません。日本年金機構の説明も、退職した第2号被保険者の配偶者が第3号を失うことについて、健康保険の選び方による例外を置いていません。

健康保険の列が違う理由は、次の節から1行ずつ見ます。

国民健康保険を選ぶと、配偶者の分も保険料に乗る

国民健康保険の保険料には、加入者ごとに数える部分があります。新宿区の令和8年度の料率では、均等割額は「世帯の加入者数」に比例し、所得割額は「世帯の加入者全員の算定基礎額」に料率を掛けて出します。

配偶者が加入者に加わると、均等割が1人分増えます。新宿区の令和8年度なら、医療分47,600円、支援金分17,600円、子ども・子育て支援金分1,873円の合計67,073円です。配偶者が40歳から64歳なら介護分17,800円も加わって84,873円になります。介護分の均等割は40歳から64歳の加入者にだけ、子ども・子育て支援金分の均等割は18歳以上の加入者にだけかかるので、配偶者の年齢で増え方が違います。

所得割は、配偶者に令和7年中の所得があれば、その算定基礎額(総所得金額等から基礎控除額43万円を差し引いた額。43万円は合計所得金額が2,400万円以下の場合の額で、0円未満なら0円)にも料率がかかります。収入の無い配偶者なら、所得割は増えません。

ただし、成分ごとの上限額(新宿区の令和8年度なら医療分67万円など)に世帯の保険料がすでに当たっている場合、その成分は上限を超えては増えません。

料率は市区町村ごとに違います。ほかの自治体の料率と、所得の低い世帯に対する軽減の仕組みは退職後の健康保険はいくらになるかにまとめています。

任意継続なら、配偶者を被扶養者にできる

健康保険法は「被保険者」を「適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者」と定めています(3条1項)。任意継続で加入を続ける本人も、法律の上では被保険者です。

被扶養者は、被保険者の配偶者などで「主としてその被保険者により生計を維持するもの」です(3条7項1号)。任意継続被保険者も被保険者に含まれるので、任意継続を選んだ本人の配偶者も、条件を満たせば被扶養者になれます。

条文が置いている条件は3つです。

  1. 主としてその被保険者により生計を維持していること(3条7項1号)
  2. 日本国内に住所があること。留学など、国内に生活の基礎があると認められる場合の例外は省令で定められています(3条7項の柱書)
  3. 後期高齢者医療の被保険者など、省令で定める人に当たらないこと(3条7項のただし書)

在職中に被扶養者だったことが、そのまま任意継続に持ち越される前提で考えないでください。協会けんぽは「資格取得と同時にご家族を被扶養者として手続きする場合は、被扶養者の収入の有無にかかわらず、生計維持関係を証明できる書類の添付が必要な場合があります」としています。任意継続の申出と同時に手続きするほか、加入後に被扶養者を追加することもできます(追加する場合も、添付書類が必要な場合があります)。

この記事では、次の3つを確かめていません。

  • 被扶養者と認められる収入の基準額。条文に金額は無く、この記事では一次情報を取っていません
  • 退職して本人の給与が無くなったあと、「主としてその被保険者により生計を維持する」の判定がどうなるか
  • 配偶者を被扶養者にしたときに、任意継続の保険料が変わるかどうか

どれも、加入していた協会けんぽの支部か健康保険組合に確かめてください。任意継続の保険料の決まり方と申出の期限は退職後の健康保険はいくらになるかにまとめています。

配偶者の届出は、14日以内に市町村へ

第3号から第1号に変わった配偶者は、届出をします。国民年金法12条1項は、被保険者(第3号被保険者を除く)に、種別の変更などを市町村長に届け出るよう求めています。第1号に変わった配偶者は、届け出る時点では第3号ではないので、この項に当たると読めます。日本年金機構の「配偶者が転職・退職したときの手続き」は第3号から第1号への切り替えを示し、第1号の加入手続きのページへ案内しています。そのページ(「国民年金に加入するための手続き」)では、手続き先は住所地の市区役所または町村役場です。

期限は、国民年金法施行規則6条の2第1項が「当該事実があつた日から十四日以内」と定めています。同項が除いているのは第2号被保険者になったことによる種別の変更だけで、第3号から第1号への変更は除かれていません。

起算日は、条文のとおり「当該事実があつた日」(種別の変更があった日)です。日本年金機構のページにある「退職日の翌日から14日以内」は、本人が第1号に加入する手続きの書き方です。

届出は、配偶者本人のほか、世帯主が代わりにすることもできます(12条2項)。

第3号になるときの届出は、行き先が違い、厚生労働大臣あてに(12条5項)、会社員の配偶者なら第2号被保険者の勤め先を経由して出します(12条6項。公務員や私学の教職員の配偶者は共済組合などを経由します)。外れて第1号になるときは、勤め先ではなく市町村に出します。

保険料は、種別が変わった月の分から

国民年金保険料は、令和8年度は月額17,920円です。12か月では215,040円になります。

種別が変わった月は、変更後の種別の月とみなされます(国民年金法11条の2)。保険料は被保険者期間の各月について徴収され(87条2項)、第3号の期間は納付を要しない(94条の6)ので、配偶者が保険料を納めるのは第1号に変わった月の分からです。

本人も、配偶者の保険料と無関係ではありません。国民年金法は、配偶者の一方に、被保険者である他方の保険料を連帯して納付する義務を負わせています(88条3項)。世帯主にも同じ義務があります(88条2項)。配偶者の保険料は、世帯の支出として見込んでおくものです。

配偶者が60歳に達した日の翌日に、被保険者の資格を失います(9条3号)。第1号として保険料を納めるのは、そこまでです。

所得が少ないなどで納めることが難しい場合は、申請して承認を受けると保険料の納付が免除になる場合があります(日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」)。

この計算機での扱い

このサイトの計算機では、配偶者の区分で「いる(収入なし)」か「いる・上記以外(国民健康保険)」を選ぶと、配偶者を国民年金の払い手にも、国民健康保険の加入者にも数えます。「いる・勤め先の社会保険に加入している」を選ぶと、配偶者は第2号被保険者のままとして、どちらにも数えません。配偶者の手取りから国民年金保険料や国民健康保険料がすでに引かれていると答えた場合は、二重に見込まないように扱いを変えます。金額は計算機の画面で確かめてください。

健康保険は国民健康保険として計算していて、任意継続は扱っていません。任意継続を選んで配偶者を被扶養者にする場合の保険料は、計算機の結果とは別に確かめてください。

国民年金保険料は、常に満額で計算しています。免除や納付猶予は織り込んでいません。

何ヶ月もつかを見る

配偶者の国民年金保険料は、健康保険の選び方に関係なく、種別が変わった月から世帯の支出に加わります。退職の判断をするときは、自分の分とは別に見ておく必要があります。

この計算機は、辞めたあとに自己負担になる国民健康保険・国民年金・住民税・所得税・個人事業税を織り込んで、貯金が何ヶ月もつかを出します。

計算機が何を多めに見て、何を織り込んでいないかはこの計算機が何を前提にしているかにまとめています。

出典

  1. デジタル庁(e-Gov法令検索)『国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)』令和8年5月25日施行の版(334AC0000000141_20260525_506AC0000000052) / 2026年9月26日 確認
  2. デジタル庁(e-Gov法令検索)『国民年金法施行規則(昭和三十五年厚生省令第十二号)』令和8年4月1日施行の版(335M50000100012_20260401_508M60000100050) / 2026年9月26日 確認
  3. デジタル庁(e-Gov法令検索)『健康保険法(大正十一年法律第七十号)』令和8年8月1日施行の版(211AC0000000070_20260801_508AC0000000031) / 2026年9月26日 確認
  4. 日本年金機構『た行 第3号被保険者』2026年9月26日 確認
  5. 日本年金機構『会社を退職したときの国民年金の手続き』2026年9月26日 確認
  6. 日本年金機構『配偶者が転職・退職したときの手続き』2026年9月26日 確認
  7. 日本年金機構『国民年金に加入するための手続き』2026年9月26日 確認
  8. 日本年金機構『国民年金保険料』令和8年度 / 2026年9月26日 確認
  9. 全国健康保険協会『任意継続』2026年9月26日 確認
  10. 新宿区『保険料の計算方法について』令和8年度・新宿区 / 2026年9月26日 確認